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プロティアン・キャリアとは?働き方の常識が変わった理由を解説

皆さんこんにちは。Rakuです。

・プロティアン・キャリアって、要するに転職が多いこと?
・終身雇用が崩れたって言うけど、何がどう変わったのか説明できない
・「働く意味」を考えると、いつもふわっとした話で終わってしまう

そのような考えを持つ方多いと思います。

この記事では、キャリアの常識がなぜ、どう変わったのかを、経営学の枠組みで解説します。

驚くのは、「働くことは尊い」という価値観すら、歴史のなかで反転していること。そこから始めて、キャリアの捉え方、そして会社と個人の「書かれていない約束」がどう書き換わったのかまで見ていきます。

ぜひ最後まで読んでみてください!

勤労は昔から美徳だった……わけではない

人が仕事をどう考え、どう感じるかは、その社会の政治・宗教の教義と文化に密接に結びついています。そして働くことの価値は固定されておらず、歴史のなかで反転しています。

働くことの評価は、社会が作り、反転しうる 古代ギリシャ宗教改革以降現代 良い生活=閑暇労働は人を貶める活動 仕事は神に仕える道労働が肯定される 働かずに暮らすことが失敗や不名誉と結びつく 働かない=威信働かない=失敗 完全な反転 同じ社会のなかでも、働くことの評価は世代をまたいで変わる。
  • 古代ギリシャ:唯一の「良い生活」は閑暇の生活。生活の必要を満たすための労働は人を貶める活動とされ、社会の最下層に割り当てられた
  • 宗教改革以降:仕事そのものが神に仕える道になりうるという考えが生まれ、労働が肯定的に扱われるようになった。これが西洋の労働倫理の起源
  • 現代:かつて働かずに暮らすことは威信の印だったのに、いまは失敗、さらには不名誉と結びつけられる

日本でも、この数十年で語られ方は大きく動きました。バブル期の「24時間戦えますか」が象徴した働き方から、時間外労働の上限規制を経て、いまは副業や転職を前提にした語り口へ。同じ社会でも、働くことの評価は世代をまたいで変わるわけです。

「最近の若者は働く意欲がない」といった議論が噛み合わないのは、そもそも前提にしている価値観の時代が違うからなんですね。

個人の側から見る:仕事への志向

社会の側だけでなく、個人の側からも見てみましょう。

仕事への志向とは、人がその仕事に与えている意味のことです。そしてその意味が、その仕事に対する考え方と行動のしかたをあらかじめ方向づけます。

  • 手段的な志向:仕事は人生の中心ではない。目的のための手段
  • 官僚制的な志向:仕事は人生の中心。組織への奉仕と引き換えにキャリアの前進を得る。職位とキャリアの見通しが社会的な自己像の源になる

重要なのは、この志向が固定されたものではなく、職場の内外の要因で絶えず変わりうるとされている点です。

同じ職場に「残業してでも任される仕事を増やしたい人」と「定時で上がって家庭や趣味に重心を置きたい人」が並んでいる。
どちらが正しいかではなく、管理者は同じ施策が別に受け取られる前提で設計する必要がある、という話です。

同じ仕事をしている2人でも、志向が違えば同じ報酬が同じようには効きません。モチベーション理論の「人による」という条件が、ここでも効いてきます。

キャリアを9つの比喩で捉える

まず用語の整理から。

  • キャリア:仕事に関わる経験や活動に伴う態度と行動の連なりで、それを本人が個人として知覚するもの。そして人生の全体にわたる
  • ジョブが「いま」の経験なのに対し、キャリアは生涯にわたって積み重なった経験

そのキャリアを、9つの比喩で捉える整理があります。

  • 受け継ぎ:生まれと親から受け継いだ、あらかじめ決まった結果
  • 周期:誰もが必ず通るとされる、見分けのつく段階
  • 行為:自分の行為。それによって世界に自分の意志を及ぼす
  • 型にはまること:「四角い穴に四角い杭」。各自が収まるべき枠がある
  • 旅:意図した方向・目的地と、その道中の経験
  • 役:人生という劇場で演じられる役
  • 関係:他者とのやりとりと社会的なつながりから生まれる
  • 資源:組織が自らの目的のために使う投入物
  • 物語:自分と他者に語る、自分の人生についての物語

9つを並べて終わりにしないのがコツです。

どの比喩で語るかによって、キャリアを「誰が主導するか」が変わります。

  • 外が決める側:受け継ぎ、型にはまること、資源
  • 本人が決める側:行為、旅、物語

家業を継ぐのは受け継ぎ、用意された階段を上がるのは周期と型、転職や独立でキャリアを作り替えるのは行為と物語。同じ人の職歴でも、語り方を変えると別の比喩になります。

だからこの節は、次の「誰が主導するのか」という論点の前に置かれているんですね。

伝統的キャリアと、プロティアン・キャリア

伝統的なモデル

  • キャリアは1〜2社のなかで育つと考えられていた
  • 直線的な段階を進むものとされた
  • 成功は組織が定義し、昇進と昇給で測られた
  • 多くの組織構造がこれを支えていた——背が高く、階層が多く、機能別の構造

段階としては、探索 → 確立 → 維持 → 引退への移行という4段階で描かれるのが典型です。自己概念を職業選択を通じて実現していく過程、という捉え方ですね。

なぜ変わったのか

因果の鎖で覚えると、すっきりします。

環境の圧力(急速な技術進歩・グローバル競争の激化・危機)
→ 企業が柔軟になるためにダウンサイジングし、組織がフラット化
→ 組織が用意する階段が減る
→ キャリアを主導するのは本人になる

この過程で、これまで影響を受けにくかった層——管理職・年長の労働者・学歴の高い層——も職を失いました。そして多くの人は職務責任と労働時間が増え、昇進の機会は減ったとされます。

プロティアン・キャリア

語源はギリシャ神話のプロテウス——意のままに姿を変えられる神です。

  • 組織ではなく本人が駆動するキャリアで、本人と環境の変化に応じて折々に本人が作り直す
  • 最終の目標は心理的成功——人生でいちばん大事な目標(達成、家族の幸福、心の平安など)を達成したときの誇りと個人的な達成感
  • これは垂直的な成功——組織のピラミッドを登り、多くの金を稼ぐこと——と対比される

よくある誤解:プロティアン・キャリアを「転職が多いこと」と説明するのは、足りません。

決め手は①誰が主導するか ②何を成功と呼ぶかの2点です。一社に居続けながら自分でキャリアを作っている人もいれば、転職を繰り返しながら毎回まわりに流されている人もいますよね。回数ではなく、主導権と成功の定義で判断します。

心理的契約:書かれていない約束の書き換え

心理的契約とは、人と組織の関係から生じる相互の期待とニーズの充足の、暗黙の連なりです。

  • 書かれた文書ではない
  • 正式な合意の一部ではない権利・特権・義務・責務だが、行動に重要な影響を持つ
  • 人は互いに受け入れられる交換を期待して関係に入り、その交換は費用と便益で評価される

お互いの期待を並べてみると、その中身が具体的に見えてきます。

個人が組織に期待すること組織が個人に期待すること
安全で衛生的な労働条件組織の理念と企業イメージを守る
雇用の安定への合理的な努力組織の目的のために勤勉に働く
挑戦的で満足のある仕事規則・方針・手続きを守る
公平な人事の方針と手続き上位者の合理的な権限を尊重する
自分に関わる決定への相談と参加経営側の好意に乗じない
機会の平等の実践忠誠と守秘、信頼を裏切らない
貢献と業績に応じた公正な報酬同僚との良好な関係を保つ
能力開発とキャリアの機会設備を私的に濫用しない
敬意ある扱いと、個人的事情への理解顧客と取引先への敬意
離職や不満の事例は、たいてい「どちらか一方の期待が満たされなかった1点」から始まる

この2つのリストは対で読みます。離職・エンゲージメント・不満の問題は、たいていどちらか一方の期待が満たされなかった1点を指すところから始まります。

関係的な契約から、取引的な契約へ

そして、この心理的契約の中身が書き換わりました。

  • 伝統的な契約:入社し、懸命に働き、成果を出し、忠誠と献身を示す。その見返りにますます大きな報酬と雇用の安定を受け取る
  • 新しい契約:継続的な学習とアイデンティティの変化に基づく

この方向は、ひとことで「関係的な契約から、取引的な契約へ」とまとめられます。

  • 関係的な契約:長期・情緒的な関係。忠誠と献身を、安定と育成に交換する
  • 取引的な契約:短期・経済的な関係。決められた仕事を、決められた対価に交換する

「終身雇用と引き換えの忠誠」は、契約書に書かれていない典型的な心理的契約でした。サービス残業の問題や、退職代行サービスの広がりは、どちらも「書かれていない期待」がずれたときに何が起きるかの例です。書面の雇用契約は変わっていなくても、暗黙の期待が変わると行動が変わるんですね。

ここで大事なのは、「良くなった/悪くなった」と評価しないことです。交換の基礎が変わったのであって、どちらにも得と損があります。安定を失った代わりに裁量と選択肢を得た——両側に触れられると、議論が一段深くなります。

これからの職務設計:良い仕事から、賢い仕事へ

成功の定義が心理的成功になったのなら、職務設計を仕事と報酬だけで止めてはいけない——そんな主張から、仕事を5つの面で捉える整理が提案されています。

  • する:仕事そのものを行うこと
  • 受け取る:期待している報酬を受け取ること
  • つながる:その仕事が可能にする人との関係
  • 貢献する:他者と事業の成果に与える影響
  • 両立させる:個人の仕事と、人生の他の領域との往復

最初の2つだけで設計された仕事は「良い仕事」にはなっても「賢い仕事」にはならない、という整理です。関係・意味・生活との両立まで設計に入れて、はじめて現代の働き手に噛み合う、ということですね。

管理者は具体的に何をすればいいのか

  • 安定の約束ではなく、学習と成長の機会で引きつける——新しい契約は継続的な学習で回る
  • 心理的契約を言葉にする——書かれていなくても行動に影響するのだから、双方の期待を確かめる場を作る
  • 移動を前提に設計する——1社で勤め上げる前提を持たない人が増えた。人が抜けても壊れない仕事の作り方にする
  • 報酬を設計する前に、その人の志向を見る
  • 心理的成功を支える——その人のいちばん大事な目標が職場の外にあることも認める

なお世代論もこの文脈でよく登場しますが、使い方には注意が必要です。世代の特徴はあくまで大きな一般化。同じ世代の中にも起業志向の人と安定志向の人がいます。世代で一括りにせず、その人が何に意味を与えているかを見るほうが、実務ではずっと役に立ちます。

まとめ

  • 働くことの意味は社会が作り、反転しうる。古代ギリシャでは労働は貶める活動だった
  • 仕事への志向は人によって違い、しかも絶えず変わりうる
  • キャリアの9つの比喩は、それぞれ「誰が主導するか」を含意している
  • プロティアン・キャリアの決め手は、転職回数ではなく「主導権」と「成功の定義」
  • 心理的契約は関係的なものから取引的なものへ。良い悪いではなく、交換の基礎が変わった
  • これからの職務設計は、する・受け取るだけでなくつながる・貢献する・両立させるまで含める

自分のキャリアを振り返るとき、「いま誰が主導しているか」と「自分は何を成功と呼んでいるか」——この2つを言葉にしてみてください。転職するかどうかより、ずっと先に考えるべき問いだと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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