皆さんこんにちは。Rakuです。
・ダイバーシティとインクルージョン、何が違うの?
・「多様な人を採用しました」で終わっている気がする
・無意識のバイアスって、結局どう気をつければいいの?
そのような考えを持つ方多いと思います。
この記事では、職場の多様性を「見える違い」と「効いている違い」という切り口から解説します。
この論点が経営学に存在する理由は、実はとてもシンプルです。判断を引き起こす違いと、実際に仕事に効いている違いが、食い違っているから。ここが分かると、施策の良し悪しが自分で判断できるようになります。
ぜひ最後まで読んでみてください!
まず押さえたい4つの定義
- 労働力の多様性:組織にいる人々が互いに異なっている仕方、そして似ている仕方
- インクルージョン(包摂):従業員が、自分の独自性が高く評価される集団の、尊重された一員であると感じる度合い
- 表層の多様性:容易に知覚できる違い。ステレオタイプを引き起こしうるが、その人の考え方や感じ方を必ずしも反映しない
- 深層の多様性:価値観・パーソナリティ・仕事の好みにおける違い。意思疎通、上司への反応、交渉の仕方、職場でのふるまいに影響しうる
この4つ、順番に読むと大事なことが見えてきます。
① 多様性は「違い」だけで定義されていない
定義には「似ている仕方」も含まれています。ここを落として「多様性=違い」と理解すると、定義として不正確になります。
実務的にも意味があります。違いばかり強調すると分断になりますが、共通点も同時に見ることで初めて協働の土台ができる、という含みがあるからです。
② インクルージョンは「いるかどうか」ではなく「どう感じているか」
定義をよく読んでください。「従業員が…と感じる度合い」です。
つまり人口統計的には多様なのに、インクルージョンがまったくない職場はありえます。だからこの2語は、必ず並べて定義されるんですね。
「多様な人を採用しました」で止まっている取り組みが物足りなく感じるのは、まさにここです。採用は多様性の話で、その先はインクルージョンの話。別の指標が要ります。
③ 表層と深層の食い違いが、この論点の核心
合わせるとこうなります。
見える違いは判断を引き起こす違いで、実際に効いている違いは見えない。
この食い違いが、この論点が存在する理由です。
「均等な機会」と「多様性の管理」は別物
多様性の管理は、平等な機会を促進し差別を防ぐために設計された法律が要求することを超える。それは違いを認識し、価値あるものとする取り組みであり、労働力のなかにある独自の才能と視点を積極的に活かすことを目指す。焦点は少数派集団ではなく、個人にある。
最後の一文が、いちばん大事です。
- 均等機会の法律は「カテゴリー」を守る——指定された事由による差別を禁じる
- 多様性の管理は「個々の人」を見る
見る単位が変わっています。そしてそれには帰結があります。
ある保護対象の集団の全員を同じように扱う施策は、均等機会は満たしますが多様性の管理ではありません。誰の実際の才能も視点も見ていないからです。
「女性社員向けの研修を全員一律で実施しました」という施策が、やった側の満足で終わりがちなのはこのためですね。
個人はどう違うのか
経営学は、個人差の要素を10個ほど挙げます。民族的出自、性別、幼少期の家族経験、社会的・文化的要因、国の文化、動機づけ、態度、パーソナリティの特性と類型、知能と能力、知覚。
ざっくり言うと前半は表層または背景の要因、後半は深層という構造になっています。
そしてこのうちパーソナリティと知覚の2つが、特に詳しく扱われます。
パーソナリティ:ビッグファイブ
パーソナリティとは「ある人を他の人と異なる唯一の存在にしている、諸特性の組み合わせ」。それを5つの次元で捉えるのがビッグファイブです。
- 外向性:社交的で、人づきあいがよく、自己主張する
- 協調性:気立てがよく、協力的で、人を信頼する
- 誠実性:責任感があり、頼りになり、注意深い
- 情緒安定性:リラックスしていて、安定していて、思い煩わない
- 開放性:好奇心が強く、新しいものを受け入れ、変化に開かれている
なお、5番目を神経症傾向と呼ぶ流儀もあります。情緒安定性と神経症傾向は、同じ次元を反対の極から述べたものなので、どちらで出てきても同じものだと分かれば大丈夫です。
なぜ多様性の話にビッグファイブが出てくるのか
理由は明快で、ビッグファイブは深層の多様性そのものだからです。
見ただけでは分からない。それでいて、意思疎通・上司への反応・交渉・ふるまいをまさに左右する。先ほどの定義にぴったり当てはまりますよね。
そしてもうひとつ大事な視点があります。
ある前提のもとでは欠点に見える特性が、別の前提のもとでは強みになる。
内向的なリーダーシップが近年注目されるのは、この逆転が起きるからです。「発言量が多い=リーダー向き」という前提を外すと、評価がひっくり返ります。
知覚の3つの歪み
知覚とは、人が環境から情報を受け取り、整理し、解釈する過程のこと。押さえるべき前提は3つです。
- 知覚は、情報を受け取り・整理し・解釈する過程である
- 人は同じものや状況を、異なって知覚しうる
- 人は自分の知覚にもとづいて行動する
3つ目が、この節が存在する理由です。
もし人が事実にもとづいて行動するのなら、知覚の歪みは面白い雑学で終わります。でも実際には知覚にもとづいて動くので、知覚の歪みは、そのまま行動の歪みになります——採用で、評価で、誰に面白い仕事を任せるかで。
3つの歪みと、その見分け方
- ステレオタイプ:ある集団に一般に結びつけられている属性が、個人に割り当てられるときに生じる
- ハロー効果:1つの属性が使われて、人や状況についての全体的な印象が作られるときに生じる
- 投影:自分の属性を他の個人に割り当てること
情報がどちらへ流れるかで見分けると、混乱しません。そして壊れ方もそれぞれ違います。
- ステレオタイプは、その人についてではなかった情報を持ち込む
- ハロー効果は、その人についての情報を過度に一般化する
- 投影は、自分についての情報で置き換える
投影がやっかいなのは、本人にまったく悪気がないことです。「自分ならこうしてほしいから、相手もそうだろう」という善意の推測が、相手のニーズを塗りつぶしてしまう。よかれと思ってやった配慮が空回りするときは、たいていこれが起きています。
ちなみにステレオタイプは、まさに「表層の多様性が引き起こしうる」と説明されていたものです。表層・深層の話と、知覚の歪みの話は、同じ失敗を両側から記述しているんですね。片方は特性の側から、もう片方は知覚する側から。
心理的契約:何が公正な交換かは、人によって違う
心理的契約とは、雇用関係において何が与えられ、何が受け取られるかについて個人が抱く期待の集合です。書面には存在しませんが、行動には強く影響します。
理想的な就業状況とは、貢献と誘因がつりあっている状態のこと。そして、その釣り合いを組織の側から作ろうとする意図を従業員価値提案と呼びます。
これが多様性の話に出てくる理由は、はっきりしています。
何が公正な交換かは、人によって違うからです。
人は、何を差し出す気があるかも、何を誘因として価値あるものとみなすかも違います。柔軟な勤務時間、成長の機会、地位、安定、報酬——どれを重く見るかは人それぞれ。これらはまさに、深層の多様性と呼ばれた価値観と仕事の好みです。
だから「全員を同じに扱う」ことが、ある人にとっては不公正な心理的契約を生みうる。
これは「集団ではなく個人を見る」という結論に、別の方向から到達しています。
多様性に取り組む2つの理由
経営学は、道徳的な理由と並べて事業上の理由を挙げます。しかも2つに分けて。
- 定着:多様性が価値あるものとされている組織の労働者は、一般に雇用主により強く関与していると感じ、とどまる可能性が高い
- 獲得:その組織は先進的な雇用主としての評判を築き、人材が希少なときに最良の人々を惹きつけられる
すでに中にいる人がとどまるのと、外にいる人が来たがるのは、別の効果です。取り組みの成果を測るときも、この2つは別々に見る必要があります。
まとめ
- 多様性は「違い」と「似ている点」の両方で定義される
- インクルージョンは「いるかどうか」ではなく「どう感じているか」。多様なのに包摂がない職場はありえる
- 見える違いは判断を引き起こし、効いている違いは見えない。これがこの論点の核心
- 均等機会はカテゴリーを守り、多様性の管理は個人を見る
- 3つの歪みは情報の流れる向きで見分ける(集団→個人/一部→全体/自分→相手)
- 全員を同じに扱うことが、不公正になりうる
自社の取り組みを見るときは、「これは採用の話か、それとも、いる人がどう感じているかの話か」と問い直してみてください。この一問だけで、施策の抜けがかなり見えるようになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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