皆さんこんにちは。Rakuです。
・弾力性って、結局なにを測っているの?
・値上げすると売上は増えるの、減るの?
・計算のとき、どっちの値で割るのか毎回迷う
そのような考えを持つ方多いと思います。
この記事では、経済学の「どれくらい?」に答える道具である弾力性を解説します。
需要と供給は「価格が上がれば量が減る」という向きを教えてくれますが、どれくらい減るのかは教えてくれません。そこを埋めるのが弾力性です。値上げの判断や、税の負担が誰に乗るのかまで、これひとつで見通せるようになります。
ぜひ最後まで読んでみてください!
弾力性とは「反応の大きさ」の物差し
弾力性は4種類ありますが、測っているものはどれも同じです。「あるものが1%変わったとき、数量は何%変わるか」。
| 名前 | 何に対する反応か | 計算式 |
|---|---|---|
| 需要の価格弾力性 | その財の価格 | 需要量の%変化 ÷ 価格の%変化 |
| 需要の所得弾力性 | 所得 | 需要量の%変化 ÷ 所得の%変化 |
| 需要の交差価格弾力性 | 他の財の価格 | 需要量の%変化 ÷ 他財価格の%変化 |
| 供給の価格弾力性 | その財の価格 | 供給量の%変化 ÷ 価格の%変化 |
4つとも構造が同じなので、1つ覚えれば残りは分母を入れ替えるだけです。
中点法:どっちで割るか迷わない計算方法
%変化を出すとき、変化前の値で割るのか、変化後の値で割るのかで答えが変わってしまいます。100円→120円は20%の上昇ですが、120円→100円は約16.7%の下落。同じ変化なのに数字が違う。
そこで使うのが中点法です。分母を2つの値の平均にします。
%変化 = (新しい値 − 古い値)÷ (2つの値の平均)× 100
平均で割るので、どちらの向きに動いても同じ数字になります。これが中点法を使う理由です。
先ほどの例なら、平均は110円。変化は20円なので、どちらの向きでも約18.2%。1つの区間に1つの弾力性が決まります。
計算してみる
ある商品の価格が800円から1,000円に上がり、需要量が500個から400個に減ったとします。
- 価格の%変化 = 200 ÷ 900 × 100 = 約 +22.2%
- 数量の%変化 = −100 ÷ 450 × 100 = 約 −22.2%
- 弾力性 = −22.2 ÷ 22.2 = −1.0
判定は必ず絶対値で行います。需要の価格弾力性は理論上マイナスになるので、マイナス符号を見て「小さい」と判断すると逆になってしまいます。
弾力的・非弾力的の判定
- 絶対値 > 1 → 弾力的:価格より数量が大きく反応する
- 絶対値 < 1 → 非弾力的:価格ほどには数量が動かない
- 絶対値 = 1 → 単位弾力的:同じだけ動く
そしてここが実務でいちばん効く帰結です。
非弾力的な財を値上げすると、売上(価格×数量)は増えます。客は減るけれど、減り方が値上げ幅より小さいからです。
弾力的な財を値上げすると、売上は減ります。客の減り方のほうが大きいからです。
「値上げすべきかどうか」の答えは、商品ごとに違います。
何が弾力性を決めるのか:5つの要因
① 近い代替財があるか
代替品が多いほど弾力的になります。値上げされたら乗り換えればいいからです。
② 必需品か贅沢品か
必需品は非弾力的、贅沢品は弾力的。高くても買わざるをえないものと、我慢できるものの違いですね。
③ 市場の定義がどれだけ広いか
狭く定義された市場ほど弾力的になります。
「食品」全体の需要はきわめて非弾力的です。値上がりしても食べないわけにいきません。でも「あるメーカーの特定のヨーグルト」なら話は別。他社に乗り換えられるので弾力的です。
④ どれだけ時間が経ったか
長期ほど弾力的になります。時間があれば代替手段を見つけられるからです。
ガソリンが値上がりしても、明日いきなり通勤をやめることはできません(短期は非弾力的)。でも数年あれば、燃費のいい車に買い替えたり、職場の近くに引っ越したりできます(長期は弾力的)。
⑤ 所得に占める支出の割合
家計に占める割合が大きいほど弾力的。住宅や車の価格が10%動けば必死に比較しますが、コショウが10%値上がりしても気づきすらしませんよね。
5つを貫く問いはひとつだけです。
「この価格変化から、買い手はどれだけ簡単に逃げられるか?」
逃げやすいほど弾力的、逃げにくいほど非弾力的。5つとも、逃げやすさを別の角度から言っているだけです。
練習:どちらが弾力的か
理屈が分かったら、実際に判定してみましょう。
- 「都市ガスの需要は、長期より短期のほうが弾力的」→ 誤り。逆です。時間があるほど設備を替えられるので、長期のほうが弾力的
- 「タッチパネル式モニターの需要は、モニター一般の需要より弾力的」→ 正しい。狭く定義された市場のほうが弾力的です
- 「カフェラテの需要は、食用油の需要より弾力的」→ 正しい。カフェラテは贅沢品寄りで代替も多い。食用油は必需品寄りです
- 「火災報知器の需要は、高級絨毯の需要より弾力的」→ 誤り。火災報知器は必需品寄りなので非弾力的。絨毯が贅沢品です
最後の2つは意図的に反転させた組み合わせです。「片方が贅沢品なら弾力的」というパターンを覚えただけでは、順番を入れ替えられると間違えます。毎回どちらが必需品かを考えるのが安全です。
供給の弾力性も考え方は同じ
供給側も「価格が上がったとき、どれだけ簡単に生産を増やせるか」で決まります。
- 在庫があり、設備に余裕がある → 弾力的
- 生産に時間がかかる、土地や鉱山のように増やせない → 非弾力的
- 長期ほど弾力的。設備を増やす時間があるから
都心の土地の供給がほぼ垂直(きわめて非弾力的)なのは、値段が上がっても土地そのものを増やせないからですね。
なぜ弾力性が重要なのか
この道具は、このあとの議論でずっと使われます。
- 値上げの判断:売上が増えるか減るかは弾力性で決まる
- 税の負担:税を誰に課しても、より非弾力的な側が多く負担する
- 政策の効き方:家賃規制や最低賃金の被害の大きさも、弾力性が決める
2つ目が特に面白いところです。逃げられない側が負担を押しつけられる——たばこ税が消費者に乗りやすいのは、たばこの需要が非弾力的だからなんですね。この話は税と政策の記事で詳しく扱います。
まとめ
- 弾力性は「反応の大きさ」の物差し。4種類あるが構造は同じ
- 中点法なら、どちらの向きに動いても同じ数字になる
- 判定は必ず絶対値で。1より大きければ弾力的
- 非弾力的なら値上げで売上増、弾力的なら値上げで売上減
- 5つの決定要因は、すべて「買い手がどれだけ簡単に逃げられるか」を言い換えたもの
値上げを考えるとき、「うちの商品はお客さんがどれだけ簡単に逃げられるか」と一度問い直してみてください。答えがそのまま、値上げしていいかどうかの答えになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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