皆さんこんにちは。Rakuです。
・家賃規制や最低賃金って、結局いいことなの?
・消費税は「事業者が納める税」なのに、なぜ消費者が負担していると言われるの?
・関税をかけると誰が得して、誰が損するの?
そのような考えを持つ方多いと思います。
この記事では、政府が市場に手を入れると何が起きるかを解説します。
政策はいくつも出てきますが、やっていることは全部同じです。「政府が価格か数量を均衡から引き離す。すると、少ないほうの側が実際の取引量を決める」——この1行を持っていれば、あとは応用です。
ぜひ最後まで読んでみてください!
価格の上限:まず「効いているか」を確かめる
価格の上限とは、その財が売られてよい価格の法的な最大値のこと。代表例が家賃規制です。
ここで定番の引っかけがあります。
均衡価格より上に上限を置いても、何も起きません。
市場はもともとそれより低い価格で取引しているからです。上限が効くのは均衡より下に置いたときだけ。
何を言うより先に、上限が均衡のどちら側にあるかを確かめてください。
均衡より下に置いた場合、こうなります。
- 価格が下がるので、需要量は増える
- 同時に、供給量は減る
- その差が不足として現れる
実際に取引されるのは、どちらの量か
買い手はたくさん欲しいのに、売り手は少ししか出さない。実際に動くのはどちらでしょうか。
答えは供給量のほう、つまり少ないほうです。取引が成立するには買い手と売り手の両方が必要で、売ることを強制はできないからです。
これを「少ないほうが決める」と言います。
この1行があれば、価格の上限でも下限でも、同じ考え方で処理できます。そして「不足」というのが「欲しい人がランダムに買えない」という意味ではなく、市場が短いほうの曲線上の点に着地するという意味だということも分かります。
不足は何に化けるのか
価格が上がれないなら、調整は価格以外の形で起きます。
- 行列と待ち時間——お金を払えないぶん、時間を払う
- 質の低下——家賃を上げられない大家は、修繕を減らす
- 闇市場——上限より高い価格での非合法な取引
- 売り手による選別——コネや属性で買い手を選ぶ
そして時間が経つほど被害は大きくなります。短期では供給も需要も動きにくい(非弾力的)ので不足は小さいのですが、長期になると大家が賃貸をやめ、借り手も戻ってこない。弾力性が大きくなるぶん、不足も広がるわけですね。
価格の下限:上限の鏡像
価格の下限は法的な最小値です。構造は上限とそっくり逆になります。
- 効くのは均衡より上に置いたときだけ
- 供給量が増え、需要量が減って余剰が生じる
- 実際の取引量は、やはり少ないほう——つまり需要量
代表例が最低賃金です。労働市場に当てはめると、余剰=失業として現れます。
ここで大事なのは、これが「最低賃金は悪い」という結論ではないということ。モデルが言えるのは「均衡より高く設定すれば、雇用量はこう動く」まで。どれくらい動くかは弾力性しだいですし、そもそも「賃金の底上げと雇用量のどちらを重く見るか」は価値判断の問題です。
この週の山場:税は誰に課しても結果が同じ
ここがいちばん面白いところです。
1単位あたりの税を、買い手に課した場合と売り手に課した場合で図を描くと、動く曲線が違います。買い手に課せば需要曲線が下へ、売り手に課せば供給曲線が上へ。
ところが——買い手が払う価格も、売り手が受け取る価格も、取引量も、2つの図でまったく同じになります。
理由はこうです。税は、買い手が払う額と売り手が手元に残す額の間に固定された幅のくさびを打ち込みます。市場がどこに落ち着くかは需要曲線と供給曲線で決まり、それらは変わっていません。変わったのは、どちらを描き直したかだけ。
税の経済的な負担は、法律上どちらから徴収するかに依存しません。
法律上どちら側から取るかは行政上の事実であって、経済的な事実ではないんですね。
だから「事業者に課される税だから消費者は関係ない」とは言えません。
税のくさびと、負担の計算
計算で気をつける点が3つあります。
- 掛けるのは課税後の数量。税は実際に取引された単位について徴収され、数量は減っています
- 2つの負担の合計が税収になる。合わなければ計算違い。タダでできる検算です
- 市場の全員が悪化する。買い手は多く払い、売り手は少なく受け取り、両方とも取引量が減ります
誰が多く負担するかは、弾力性が決める
では、くさびのどこで買い手と売り手が分かれるのか。答えは弾力性です。
- 需要が弾力的(買い手に逃げ道がある)→ 価格をあまり上げられない → 売り手の負担が大きい
- 需要が非弾力的(買い手に行き場がない)→ 大幅な値上げも吸収される → 買い手の負担が大きい
一般則は一行です。
税は、逃げにくいほう——つまりより非弾力的な側——に重くのしかかる。
覚え方:逃げられる者は逃げる。逃げられない者が払う。
極限の場合を押さえておくと便利です。
- 完全に非弾力的な需要(買い手が数量を1つも減らせない)→ 買い手が100%負担し、数量は減らない
- 完全に弾力的な需要(買い手が1円も余計に払わない)→ 売り手が100%負担
そしてもうひとつ重要な区別。くさびの幅は税率で決まっていて固定です。弾力性が変えるのは、そのくさびの中のどこで区切られるかであって、くさびの幅ではありません。ここを混同しないのが理解の分かれ目です。
生産割当:価格ではなく数量を縛る
生産割当は、生産できる数量に法的な上限をかける政策です。
供給曲線が上限のところで垂直に折れるので、それ以上は価格が上がっても供給が増えません。結果として価格が上がります。
「なぜ政府が生産を制限したがるのか」と思うかもしれませんが、価格を上げて生産者の収入を守るためというのが典型的な動機です。農産物の生産調整などがこの形ですね。
国際貿易:判定は価格を比べるだけ
貿易の分析は、驚くほど単純な判定から始まります。
- 貿易前の国内価格 < 世界価格 → その国は輸出国になる
- 貿易前の国内価格 > 世界価格 → その国は輸入国になる
安く作れる国は売りに行き、高くつく国は買いに行く。比較優位の話が、価格という形で現れているわけですね。
輸入関税と輸出補助金
- 輸入関税は輸入品の国内価格を上げます。すると国内生産が増え、国内消費が減る。両側から挟まれるので、輸入量は必ず減ります
- 輸出補助金は輸出を有利にします。すると国内生産が増え、国内消費が減る。やはり両側から挟まれて、輸出量は必ず増えます
どちらも「生産側と消費側の両方を同時に押す」ので、結果の向きが確定します。ここは覚えやすいところです。
全部を貫く1つの構造
ここまで見てきた政策は、見た目はバラバラですが、やっていることは同じです。
- 政府が価格か数量を均衡から引き離す
- すると少ないほうの側が実際の取引量を決める
- その被害の大きさを決めるのが弾力性
ここまでで「誰が得して、誰が損するか」は言えるようになりました。でも「いくらか」「得は損を上回るのか」はまだ言えません。それを測る道具が、次の記事の主題です。
まとめ
- 価格の上限は均衡より下、下限は均衡より上に置いたときだけ効く
- 実際の取引量は需要量と供給量の少ないほう
- 税は誰に課しても結果が同じ。法的な納税者と、実際の負担者は別
- 負担はより非弾力的な側に重くのしかかる
- 貿易の判定は国内価格と世界価格を比べるだけ
「事業者に課す税だから消費者には関係ない」「最低賃金を上げれば賃金が上がるだけ」——こうした議論を見かけたら、くさびと弾力性を思い出してみてください。話がかなり整理されます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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