皆さんこんにちは。Rakuです。
・社員が勝手に結んだ契約、会社は責任を負うの?
・「権限がなかった」と後から言えば逃げられる?
・代理人の権限って、どこまで及ぶの?
そのような考えを持つ方多いと思います。
この記事では、代理(エージェンシー)を解説します。
※ この記事が扱うのはマレーシアの法律です。条文は Contracts Act 1950(1950年契約法)を指します。日本の民法とは制度が異なります。
代理は地味に見えますが、会社の活動はほぼすべて代理で動いています。法人は自分では動けないので、誰かが代わりに契約するしかないからです。ここが分かると、会社法の理解も一段深くなります。
ぜひ最後まで読んでみてください!
代理とは何か
代理人とは、本人のために行為をし、本人と第三者との取引において本人を代表する者のこと。そしてその代理人が代表する側が本人です。
ここがいちばん大事な構造です。契約は本人と第三者のあいだに成立し、代理人は原則として当事者になりません。
成立の要素は3つ。①本人がいること ②代理人がいること ③本人が代理人に行為をする権限を与えていること。
なお、誰が本人・代理人になれるかにも規律があります。本人になるには契約する行為能力が必要ですが、代理人になるだけなら、必ずしも完全な行為能力は要りません。代理人は自分の権利義務を作っているわけではないからですね。
代理はどうやって生まれるか:5つの経路
① 明示の選任
いちばん普通の形です。口頭でも書面でも構いません。書面で正式に権限を与えるものが委任状です。
② 黙示の選任
明示の合意がなくても、当事者の行動や関係から代理が成立することがあります。
店長が日々の仕入れをしている、といった場面ですね。いちいち委任状を交わさなくても、その地位に通常伴う権限があると理解されます。
③ 追認
これが面白い仕組みです。
権限なく行われた行為を、本人が後から承認すると、最初から権限があったことになります。遡って有効になるわけですね。
ただし要件があります。
- 代理人が本人のためにすることを示して行為していたこと
- 行為の時点で本人が存在していたこと
- 本人が重要な事実を知ったうえで追認すること
- 行為の全部を追認すること(都合のいい部分だけは選べません)
- 合理的な期間内に行うこと
4つ目が実務的に効きます。「この部分だけ認める」はできません。丸ごと引き受けるか、丸ごと否認するかの二択です。
④ 緊急代理
緊急の事態で、本人の指示を仰ぐ余裕がないとき、他人の財産を守るために必要な行為をする権限が認められることがあります。
認められる要件は厳しく、真に緊急であること、本人と連絡が取れないこと、本人の利益のために誠実に行動したことが求められます。
⑤ 禁反言による代理
ここが冒頭の疑問への答えになります。
本人が、ある人を自分の代理人であるかのように第三者に見せていた場合、
そして第三者がそれを信じて取引した場合、
本人は後から「あの人に権限はなかった」と言えなくなります。
これが禁反言(言ったことをひっくり返せない)による代理です。
要件は3つ。
- 本人による表示——言葉でも、行動でも、黙認でもよい
- 第三者がそれを信頼したこと
- その信頼に基づいて立場を変えた(取引した)こと
この仕組みが守っているのは善意の第三者です。外から見て代理人らしく見える人と取引したのに、あとで「実は権限がなかった」と言われたら、誰も安心して取引できませんよね。
実務的な教訓としては、辞めた社員の名刺や社内メールを放置しないこと。黙認が「表示」になりうるからです。
代理人の権限の種類
権限は大きく2つに分かれます。
| 種類 | 中身 | 効果 |
|---|---|---|
| 実際の権限(明示) | 本人がはっきり与えた権限 | 本人が拘束される |
| 実際の権限(黙示) | その地位や慣行に通常伴う権限 | 本人が拘束される |
| 表見的な権限 | 実際にはないが、外から見てあるように見える権限 | 本人が拘束される |
表見的な権限が、先ほどの禁反言による代理と対になる概念です。本人と代理人のあいだでは権限がなくても、第三者との関係では権限があったものとして扱われます。
権限を越えたらどうなるか
- 権限内の部分と外の部分が分けられるなら、権限内の部分だけ本人が拘束される
- 分けられないなら、本人はその行為に拘束されない
- ただし本人が追認すれば、全体が有効になる
そして代理人自身はどうなるか。権限がないのにあるかのように振る舞った代理人は、第三者に対して責任を負いうるとされています。
つまり第三者は、本人に請求できないなら、代理人に請求するという道が残されているわけですね。
代理人の義務
代理人は本人の信頼を受けて動くので、重い義務を負います。
- 本人の指示に従う(指示がなければ慣行に従う)
- 相当の技能と注意をもって行為する
- 自ら行為する——原則として復代理人を使わない
- 計算を明らかにする——受け取った金銭を報告する
- 利益相反を避ける
- 秘密の利益を得ない——本人に無断でリベートを受け取らない
- 緊急時には損失を防ぐ措置を取る
とくに秘密の利益の禁止は厳格です。取引先からこっそり手数料を受け取っていた、というのが典型例。本人に損害が出ていなくても、その利益は本人に引き渡さなければなりません。
本人の義務
- 報酬を支払う
- 費用を償還する——代理人が立て替えた費用を返す
- 適法な行為から生じた責任を補償する
そして代理人には留置権が認められます。報酬や費用が支払われるまで、本人の財産を留め置くことができる権利です。代理人を守る仕組みですね。
まとめ
- 代理は三者関係。契約は本人と第三者のあいだに成立する
- 成立の経路は明示・黙示・追認・緊急・禁反言の5つ
- 追認は遡って有効になるが、全部か無か
- 表見的な権限があれば、実際に権限がなくても本人が拘束される
- 代理人は秘密の利益を得てはならない。損害の有無を問わない
代理法の核心は、「外から見てどう見えるか」を法が重視しているところだと思います。内部の取り決めより、第三者から見た外観を優先する——この発想は、次のパートナーシップや会社法でも繰り返し出てきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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