皆さんこんにちは。Rakuです。
・業務委託契約なら、労働法は関係ないの?
・契約書に「個人事業主」と書けば、それで決まり?
・そもそも、なぜこの区別がそんなに重要なの?
そのような考えを持つ方多いと思います。
この記事では、雇用法——とくに労働者か、独立した請負人かという区別を解説します。
※ この記事が扱うのはマレーシアの法律です。日本の労働法とは制度が異なります。ギグワークの扱いなどは各国で議論が進行中の分野でもあります。
この区別は、ギグワークやフリーランスが広がったいま、世界中で争われている論点でもあります。考え方の枠組みを知っておくと、ニュースの読み方も変わります。
ぜひ最後まで読んでみてください!
雇用法の法源は3つ
- 制定法:議会が作った法律
- 下位立法:規則や命令
- 判例法:裁判所が積み上げてきた準則
中心になる法律は2つです。
| 法律 | 役割 |
|---|---|
| 雇用法(Employment Act 1955) | 労働条件の最低基準。労働時間、休日、賃金の支払い、休暇など |
| 労使関係法(Industrial Relations Act 1967) | 労使関係の枠組み。労働組合、団体交渉、不当解雇の救済など |
役割分担を押さえておくと、問題を見たときにどちらの法律の話かが分かります。賃金や労働時間なら前者、解雇や組合なら後者、という具合ですね。
なぜ「労働者かどうか」が重要なのか
この区別は、法律の世界では雇用契約と請負契約の区別と呼ばれます。
- 雇用契約:使用者に雇われて働く。この人が労働者
- 請負契約:独立した立場で仕事を請け負う。この人が独立した請負人
区別が決定的なのは、法的な帰結がまるごと変わるからです。
とくに最後の代位責任が重要です。労働者が業務中に第三者に損害を与えた場合、使用者も責任を負います。独立した請負人なら、原則としてそうはなりません。
つまりこの区別は、当事者だけでなく、被害を受けた第三者にとっても決定的なわけですね。
判定の3つのテスト
ここで押さえるべき大前提があります。
契約書のラベルは決め手になりません。
「業務委託契約」と題されていても、実態が雇用なら労働者と扱われます。
裁判所が見るのは実質であって、当事者が付けた名前ではありません。冒頭の疑問への答えがこれです。
では何を見るのか。テストは3つあり、歴史的に積み重なってきました。
テスト①:支配テスト
いちばん古いテストです。問いはシンプル。
「その人が何を、どのように、いつ、どこでやるかを、相手が指示できるか」
指示できるなら雇用契約、できないなら請負契約、という判定です。工場労働が中心だった時代には、これでうまくいきました。
ただし重要な留保があります。実際に支配しているかではなく、支配する「権利」があるかが問われる、という点。日常的に細かく指示していなくても、指示できる立場にあるなら支配があると評価されます。
テスト②:組織テスト(統合テスト)
支配テストには限界がありました。専門職です。
病院に雇われた外科医の手術のやり方を、病院が指示できるでしょうか。できません。専門的な判断は本人がします。でもその医師は明らかに病院の従業員です。
そこで出てきたのが組織テストです。問いはこう変わります。
「その人の仕事は、組織に統合されているか。それとも組織に付随しているだけか」
組織の一部として組み込まれていれば労働者、外から仕事を提供しているだけなら請負人、という見方ですね。
テスト③:混合テスト(多元テスト)
現在の主流です。ひとつの基準ではなく、多くの要素を総合して判断します。
考慮される要素には、次のようなものがあります。
- 支配の程度——指示を受けるか
- 道具・設備を誰が用意するか
- 自分で補助者を雇えるか
- 財務上のリスクを負うか——赤字になることがあるか
- 投資と経営の責任があるか
- うまくやれば利益が増えるか
- 報酬の支払い方——固定給か、出来高か
- 税や社会保険の扱い
- 継続性・専属性——他社の仕事も受けられるか
とくに「自分の計算とリスクで事業を営んでいるか」という問いが、判断の中心にあります。損をする可能性を自分で背負っているなら、独立した事業者らしい、というわけですね。
3つのテストは、置き換えではなく積み重ねです。
支配テストが廃れたわけではありません。混合テストの要素のひとつとして、いまも生きています。
前の記事で出てきた「初期の考えは新しい考えに取り込まれる」という、コモンローの性質そのものですね。
実際にどう使われるか
裁判所は、テストごとに順番に当てはめて結論を出します。
たとえば「自分の車を使い、時間も自分で決めて働く配送員」を考えてみましょう。
- 支配:ルートや時間を自分で決めているなら、支配は弱い → 請負人寄り
- 統合:会社の制服を着て、会社のアプリで完結しているなら → 労働者寄り
- リスク:車両費も燃料費も自己負担で、稼働量で収入が変わるなら → 請負人寄り
- 代替性:自分の代わりに別の人を送り込めるなら → 請負人寄り。送り込めないなら → 労働者寄り
このように要素が両方向を指すのが普通です。だから結論は「どちらの要素が重いか」の総合判断になります。
事例問題でも同じです。要素を挙げて、それぞれがどちらを指すかを述べ、そのうえで結論を出す——この形が求められます。片方の要素だけ拾って断定すると、議論として弱くなります。
解雇をめぐる考え方
労働者と認められた場合、解雇には正当な理由が必要になります。
正当とされうる理由には、能力不足、非行、人員整理(事業上の必要)などがあります。ただし理由があるだけでは足りず、手続も適正でなければなりません。弁明の機会を与えるなど、公正な調査が求められます。
救済としては、復職または補償が命じられることがあります。
逆に独立した請負人なら、この枠組みは適用されません。契約書に書かれた終了条項に従うだけです。ここでも、最初の区別がすべてを決めているわけですね。
まとめ
- 雇用法の中心は労働条件の法律と労使関係の法律の2つ
- 労働者か請負人かで、保護も税も代位責任も変わる
- 契約書のラベルは決め手にならない。実質で判断される
- テストは支配 → 統合 → 混合と発展。ただし置き換えではなく積み重ね
- 判断の中心は「自分の計算とリスクで事業を営んでいるか」
ギグワーカーの地位をめぐる裁判は、世界中で続いています。ニュースを読むときは、どの要素が争点になっているかに注目してみてください。「アプリが細かく指示している」のか、「自分で稼働を決められる」のか——争点の位置が見えると、議論が一気に分かりやすくなります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


コメント