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免責条項はどこまで有効か|3つの関門をわかりやすく解説

皆さんこんにちは。Rakuです。

・駐車場の「盗難・事故の責任は負いません」という看板、本当に有効なの?
・読まずにサインした契約書でも、全部の条項に縛られる?
・チケットの裏に小さく書いてある文字にも拘束されるの?

そのような考えを持つ方多いと思います。

この記事では、免責条項——責任を免れたり制限したりする条項が、どこまで有効かを解説します。

※ この記事が扱うのはマレーシアの法律(コモンロー)です。日本は大陸法系で前提が異なり、消費者契約法など別の規律もあります。日本の法律の解説としては読まないでください。

この論点の面白いところは、「条文がない」こと自体が論点になる点です。裁判所は判例で作ったルールによって、行きすぎた免責条項を抑えてきました。

ぜひ最後まで読んでみてください!

免責条項とは何か

契約当事者の一方が、自分の責任を免れる、または制限するために置く条項です。2種類あります。

  • 免除条項:責任を全部否定する。「当社はいかなる責任も負いません」
  • 制限条項:責任を一部に限る。「賠償額は購入価格を上限とします」

制限条項は金額の上限だけとは限りません。「請求は7日以内に書面で」のような手続的な制限も、実質的には責任を絞る条項です。

3つの関門

免責条項が実際に効くには、3つの関門をすべて通過しなければなりません。

3つすべてを通らなければ、その条項は効かない ① 組み込み② 解釈③ 制定法の規制 その条項は契約の一部になっているか署名か、告知か 文言は、起きた損害を本当にカバーしているか疑わしきは作成者に不利に 法律がその条項を無効にしていないか消費者保護など 立証責任は、条項を援用する側(=免責されたい側)にあります。 「書いてあるから有効」ではなく、「有効だと示せるか」が問われます。

関門①:組み込み — 署名による場合

まず、その条項が契約の一部になっているか。経路は2つあり、ひとつが署名です。

ここに、この論点でいちばん厳しい準則があります。

L’Estrange v Graucob Ltd [1934]。自動販売機を買った店主が、注文書にサインしました。その注文書には、小さな活字であらゆる保証を排除する条項が入っていました。機械は不良品でした。

裁判所は条項の有効性を認めました。
署名した以上、読んでいなくても拘束される。詐欺や不実表示がない限り、これが原則です。
「読まなかった」は抗弁になりません。署名が組み込みを完成させてしまうわけですね。

事例問題でも同じです。「サインした」という事実が出てきたら、組み込みの議論はほぼ終わります。争点は関門②以降へ移ります。

関門①:組み込み — 告知による場合

署名がない場合(チケット、レシート、掲示など)は、相手に十分な告知がなされていたかが問われます。

立証責任は条項を援用する側にあります。「知らせたはずだ」ではなく「知らせたと示せるか」です。

検討する要素は3つ。

要素1:その文書の性質

合理的な人が「契約条件が書かれている文書だ」と思うようなものかが問われます。

単なる受領証だと思われる文書に条項を書いても、組み込まれません。文言が明確かどうか以前に、文書の種類で落ちるのがポイントです。クローク引換証やレシートが典型例ですね。

要素2:告知の程度 — チケット事件

Parker v South Eastern Railway Co (1877) が基準を示しました。3つの命題に整理されます。

  1. 相手が条項を知っていたなら、拘束される
  2. 相手が文書に何も書かれていないと信じていたなら、拘束されない
  3. 相手が何か書かれていることは知っていたが読まなかった場合——合理的な告知がなされていれば拘束される

実際の事件を決めるのは3番目で、しかも厳しいです。「何か書いてあるな」と気づいた時点で、読まなかった責任は自分に回ってきます。

ただし告知の方法が合理的でなければなりません。裏面を見るよう促す表示もなく、通常は目に入らない場所に書かれていた——そのような場合は、告知が不十分とされます。

要素3:告知の時点

ここがいちばん実用的です。Olley v Marlborough Court Ltd (1949)。

  • 夫婦がホテルのフロントで宿泊を申し込み、代金を支払った
  • 部屋に入ってから、壁に「持ち物の紛失・盗難について責任を負わない」という掲示を見た
  • その後、盗難が発生した

裁判所は、その掲示は契約の一部になっていないとしました。

決め手は「契約がいつ、どこで成立したか」です。
契約はフロントで成立していました。部屋の掲示は、契約成立より後に見たもの。
後から条件を追加することはできません。告知は、契約成立の前か同時でなければならないのです。

駐車場の例で考えると分かりやすいです。ゲートで発券された時点で契約が成立しているなら、その後に場内に掲げられた看板は効かない可能性があります。逆に入口の手前に明確な掲示があるなら、組み込まれやすくなります。

過去の取引の積み重ね

「これまで何度も同じ条件で取引してきたのだから、今回も条項は入っている」という主張もあります。

ただし認められる要件は厳しめです。Hollier v Rambler Motors [1972] では、数年のあいだに数回の取引があった程度では、一貫した取引の積み重ねとは言えないとされました。

求められるのは回数だけでなく一貫性です。毎回同じ書式で、同じ条項が示されてきた——そこまで揃って初めて認められやすくなります。

関門②:解釈 — その文言は本当にカバーしているか

条項が組み込まれたとしても、次に文言の解釈という関門があります。

ここで働くのが「疑わしきは作成者に不利に」という原則です。

  • 条項の文言が曖昧なら、それを書いた側に不利に解釈される
  • とくに自分の過失による責任を免れるには、明確な文言が必要とされる

「一切の責任を負いません」という漠然とした文言では、過失責任まで免れられないことがあります。過失を免れたいなら、その旨を明示しなければならない——裁判所はそこまで求めます。

この原則は、条項を書く側が文言を選べる立場にあることに基づいています。曖昧さの不利益は、選べた側が負うべきだ、という考え方ですね。

関門③:制定法による規制

最後の関門は、法律がその条項を無効にしていないかです。

マレーシアには消費者保護に関する法律があり、消費者取引における不公正な条項に一定の規律が置かれています。契約法の一般原則でも、公序に反する条項は無効になりえます。

つまり事業者どうしの契約と、消費者相手の契約では、通りやすさが違うということ。対等な交渉力を持つ者どうしなら広く認められる条項でも、消費者相手だと制限されることがあります。

事例問題の解き方

  1. 署名はあるか——あれば組み込みはほぼ決まり。なければ告知の検討へ
  2. 文書の性質・告知の程度・告知の時点を順に検討
  3. 契約がいつ成立したかを必ず特定する(Olley の争点はここ)
  4. 文言が、実際に起きた損害をカバーしているかを検討
  5. 制定法の規制に当たらないかを確認

3番目を飛ばさないのがコツです。免責条項の事例問題は、実は「契約はいつ成立したのか」という問題であることが多いんですね。

まとめ

  • 免責条項が効くには組み込み・解釈・制定法の3つの関門をすべて通る必要がある
  • 署名すれば、読んでいなくても拘束される。これが最も厳しい準則
  • 署名がなければ文書の性質・告知の程度・告知の時点が問われる
  • 告知は契約成立の前か同時でなければならない
  • 文言が曖昧なら書いた側に不利に解釈される

「責任を負いません」という掲示を見かけたら、「これは契約が成立する前に、自分の目に入る形で示されていたか」と考えてみてください。それだけで、その条項が効くかどうかの見当がつきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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