皆さんこんにちは。Rakuです。
・契約書に書いていない口約束は、まったく無意味なの?
・営業トークと契約条項は、どこで線を引くの?
・「この車は絶対に故障しません」と言われて買ったら、どうなる?
そのような考えを持つ方多いと思います。
この記事では、契約の中身(条項)をどう確定するかを解説します。
※ この記事が扱うのはマレーシアの法律です。日本は大陸法系で前提が異なるため、同じ問題でも結論が変わります。
この単元の問いは3段階で進みます。①書面の外のものを持ち込めるか ②その発言は条項か、ただの表示か ③条項ならどの種類か。順番に見ていきましょう。
ぜひ最後まで読んでみてください!
第1段階:書面があるとき、外の証拠は使えるか
証拠に関する法律(Evidence Act 1950)に、2つの重要な条文があります。
- 第91条:契約が書面にされているとき、その内容を証明するには書面そのものを出さなければならない
- 第92条(口頭証拠排除の原則):書面の内容を変更・追加・否定するための口頭の証拠は、原則として認められない
役割の違いを押さえてください。第91条は「何で証明するか」、第92条は「何を主張できるか」の話です。
この原則の狙いは、書面の確実性を守ることです。
サインしたあとで「実は口ではこう言っていた」と言い出せるなら、書面にする意味がなくなりますよね。
だから原則として書面がすべて。——ただし例外があります。
口頭証拠排除の原則の例外
条文は例外を列挙しています。主なものを挙げると——
- 契約を無効にする事実の立証(詐欺、強迫、錯誤、行為能力の欠如など)
- 書面に書かれていない、別個の口頭の合意があった場合
- 契約の効力発生が条件にかかっていたことの立証
- 契約を取り消す・変更する別個の合意があった場合
- 法律が書面を要求していない事項についての慣習や慣行
- 文言の意味を明らかにするための証拠
それぞれの理屈は共通しています。「書面の中身を書き換えようとしているのか、それとも書面の外側の話をしているのか」という線引きです。
詐欺の主張は、書面の条項を変えようとしているのではなく「そもそもこの契約は有効か」を問うもの。だから排除されません。
なお契約は口頭でも、一部口頭・一部書面でも成立します。法律が書面を要求している場合(土地の取引など)を除けば、形式は自由です。
第2段階:その発言は「条項」か「表示」か
交渉中の発言には、3つの段階があります。
- 誇大な宣伝文句:誰も本気にしないと分かっている売り文句。法的な効果はありません
- 表示:契約へ誘引するための事実の陳述。契約の一部にはならない
- 条項:契約の一部になる約束。守られなければ契約違反
この区別が実務的に決定的なのは、使える救済が違うからです。条項なら契約違反として損害賠償を請求できますが、表示なら虚偽表示として別の枠組みで争うことになります。
判定のテスト
裁判所は、いくつかの要素を総合して判断します。
- タイミング:発言と契約締結のあいだに、どれだけ時間が空いたか
- 書面化:その発言が契約書に取り込まれたか
- 重要性:その発言が、相手にとって契約するかどうかの決め手だったか
- 専門的知識:発言者のほうが、その事柄について詳しい立場にあったか
タイミングと書面化:Routledge v McKay [1954]
バイクの売買で、売主が年式について述べた発言が問題になりました。発言から契約書の作成まで1週間空いており、しかもその内容は契約書に書かれませんでした。
裁判所は、これは条項ではなく表示だとしました。
理由づけは「期間の長さ」そのものではなく、「機会」です。
1週間あったのに書面に入れなかった——つまり入れる機会があったのに入れなかった。ならば当事者はそれを契約の一部にするつもりがなかった、と推認されるわけですね。
この要素は、先ほどの口頭証拠排除の原則とつながっています。
重要性:Bannerman v White (1861)
ホップの売買で、買主が「硫黄が使われていないか」を明確に尋ね、「使われていたら値段も聞かない」とまで言いました。売主は使っていないと答えましたが、実際には使われていました。
裁判所は、この発言を条項としました。買主がそれを契約の決め手だと明示していたからです。
実務的な教訓としては、「これが満たされないなら契約しない」とはっきり伝えておくことが、後の立場を強くする、ということですね。
専門的知識
発言者のほうが詳しい立場にあれば、条項と認定されやすくなります。自動車ディーラーが車の状態について述べた発言と、素人の個人売主が述べた同じ発言では、扱いが変わりうるということです。
逆に、相手のほうが専門家であり、自分で確かめられる立場だった場合は、条項になりにくくなります。
第3段階:条項ならどの種類か
条項と認定されたら、次はどの重さの条項かを見ます。違反したときの効果が変わるからです。
| 種類 | 性質 | 違反したときの効果 |
|---|---|---|
| 条件 | 契約の根幹に関わる条項 | 契約を解除できる+損害賠償 |
| 担保 | 付随的な条項 | 損害賠償のみ。解除はできない |
| 中間的条項 | 違反の結果の重大さで決まる | 重大なら解除可、軽微なら賠償のみ |
3つ目の中間的条項という考え方が出てきたのには理由があります。
条項を最初から「条件」か「担保」かに分けてしまうと、ごく軽微な違反でも契約全体を解除できてしまうことがあります。それは行き過ぎなので、実際に生じた結果を見てから判断する類型が必要になったわけですね。
明示の条項と黙示の条項
もうひとつの分け方が、書かれている/言われているかです。
- 明示の条項:当事者が実際に合意した内容
- 黙示の条項:合意されていないが、契約に読み込まれる内容
黙示の条項は、3つの経路で入ってきます。
- 法律によるもの:物品売買に関する法律が定める品質の保証など。当事者が何も言わなくても入ります
- 慣習によるもの:その業界で当然とされている取引慣行
- 裁判所が読み込むもの:契約を成り立たせるためにどうしても必要な条項
3つ目の基準は厳しめです。「あったほうが便利」では足りず、「なければ契約が意味をなさない」水準が求められます。裁判所は当事者のために契約を作り直さない——この抑制が効いています。
事例問題の解き方
- 書面はあるか——あるなら、外の証拠を持ち込めるか(例外に当たるか)を検討
- 問題の発言は、誇大な宣伝文句・表示・条項のどれか——4つの要素で判定
- 条項なら、どの種類か——解除できるのか、賠償だけか
- 黙示の条項が入る余地はないか
まとめ
- 書面があるとき、それを変更する口頭の証拠は原則として使えない。ただし例外は幅広い
- 交渉中の発言は誇大な宣伝文句・表示・条項の3段階。救済が変わる
- 判定の要素はタイミング・書面化・重要性・専門的知識
- 条項は条件・担保・中間的条項に分かれ、解除できるかどうかが変わる
- 黙示の条項が読み込まれる基準は「なければ契約が意味をなさない」水準
実務的にいちばん使えるのは、「これが満たされないなら契約しません」と明示しておくことです。Bannerman の買主がそうしたように。重要だと伝えた事実は、条項になりやすい——これだけ覚えて帰っても、十分に元が取れます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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